平将門公首塚

 大手町駅C4出囗から100メートルほど行くと目の前に皇居が広がります。その手前の大手町のビジネスオフィス街、高層ビルの谷間にひっそりとその空間はあります。樹木の奥に人の背丈ほどの石の塚があり、花が生けられ、線香の煙がたちのぼり、ここだけぽっかりと別世界。まさに都心の異空間です。
 明治以後には大蔵省が、戦後まもなくにはGHQが、この塚を移転させようとするたび、事故が起こり頓挫したという逸話は有名です。荒俣宏先生の『帝都物語』ではこのあたりを題材にしてましたね。
 道を挟んだ対面のビルが建設中だというのに、(いま思い返してみると、)しんとして音が聞こえなかったような気がします。
私は「感じない」ほうなんですが、それでもなにやら気圧されて、背筋がのびました。都内有数のパワースポットと言われていますが、まさにといった感じ。
 この日は小雨が降っていたのですが、訪問者が途切れませんでした。背広姿のサラリーマン、若い女性、外国人観光客の老夫婦などまさに老若男女……。
 敷地内の立札には、ここは酒井雅楽頭の上屋敷の中庭で、歌舞伎の「先代萩」で知られる、伊達騒動、伊達安芸・原田甲斐が殺害されたところだとありました。私にとっては歌舞伎より山本周五郎先生の『樅の木は残った』の方がなじみがありますが。それにしても酒井家は江戸屋敷の中庭に将門公の塚があったことをどう思って過ごしていたんでしょう? ひとつ気になりました。